ここに一個のバッジがあります。私が普段、探訪記やその他のプライベート時に使っているバッグに一個だけポツンと付けているこのバッジ。教授のLIVE(2010年のUTAUツアー)で配られていました『more Trees』のカーボンオフセットを啓蒙するバッジ。
ご存じの方も多いと思うんですが、教授を代表とする森林保全団体である『more Trees(モア・トゥリーズ)』。木を(森を)増やし自然の力を再生させることや、森の持つCO2吸収力を中心としたカーボンオフセットなど、様々な森の力を見つめ直し、環境保護だけではなく人間の思考(生活、生き方)も変えていこうという壮大なプロジェクトなんですが、そんな『more Trees』の新たな森林保全の場所として3月に岐阜県東白川村と中津川市加子母が選ばれたんです(国内で10番目)。以前から『more Trees』の森とは一体どんな場所なんだろうか?そんなことを考えていた私は、今回は近いということもあり、愛知県のお隣りである岐阜県にお邪魔してきました。
名古屋から2時間余り、東海環状自動車道~中央高速 中津川ICを北上し最初の目的地であります東白川村へと向かいました。当日(日曜日)は、クラウン(ゴルフでしょうか?)とミニバン(行楽でしょうか?)がやたらに多い印象でした(笑・・・・仕事柄、クルマには目が行くんです)。そして渋滞も無く無事に最初の目的地である東白川村に到着。森林(ヒノキ)が有名な場所とのことでしたが、『白川茶』も有名で茶畑も多くありました。そんな東白川村の一つ目の目的、東白川森林組合を先ずは訪ねたんですが・・・・
ここがいつも私がぶつかるサラリーマン探訪記の限界(失敗)である『役所のお休み』(笑)。建物や周りの材木置き場にも人っ子一人いなかったんです。まぁ事前に問い合わせすればいいんですが、そこが行き当たりばったりの私の探訪記の醍醐味!!! こりゃお先真っ暗・・・・そんなことを思いつつも、これもいつものパターンである東白川村役場へ次は向かったんです。ここなら誰かいるか?ここなら何か分かるか?そんな思いでありました。
ここで今回の一件のお話を伺ったんですが、確かに教授が来たことは知っていたんですが、詳しいことは森林組合じゃないと分からないね~との返事。そうだよな・・・・と納得(残念ではありましたが)し、途中の道の駅で頂いたパンフレットにあった東白川村の観光案内で気になった『神明様の大杉』という場所を聞いて行ってみることにしました。
神明神社は役場から10分ほど、山肌の斜面に集落や田畑が点在する山村の一角にありました。クルマが一台通れるかの細い道を突き当たると神社の階段があり、そこを上るとこの姿が見えてきます。
力強いご神木でした。今回の旅は『森(木々)』に出会うことが一番の目的。東白川村のモア・トゥリーズの森には出会うことが出来なかったんですが、この雄大なご神木を見ることが出来て、満足しながら今度はお隣の『加子母(かしも)』へと向かうことにしました。
加子母では先ず、東白川・加子母森林組合とモア・トゥリーズの協定式が行われた『かしも明治座』を訪れました。ここは明治27年に造られた芝居小屋で、今も大切に保存されながら各種のイベントや公演が定期的に行われているとのことでした。 ちょうど前日に公演が行われていたらしく、小屋の方が片づけをされており『チョット見学させて頂きたいんですが・・・・』と声をかけると快く応じてくれました。最初に目に入ったのは『明治座維持補修基金』という案内と賽銭箱(笑)。これは1口300円で老朽化した明治座の維持補修資金を募るもので、ヒノキの割符を購入し半分に割って領収証に、残りの半分は住所や名前(任意)を書いて、明治座にかけてもらうことが出来るんです。 私ですか? もちろん購入させて頂きました(笑)!!! 明治座に行けばどこかに私の名前が飾られているかもしれません。
さて、そんな明治座を見学させて頂くことになったんですが、さすがにLIVE会場(笑)ということで、フラッシュ撮影禁止という貼り紙もあり、小屋の方に『少し写真を撮らせて頂いていいですか?』と尋ねたんです。すると『それじゃあ、せっかくですから案内しましょうか?』という話になり、ひとり貸し切り状態で(笑)この明治座を案内して頂くことが出来たんです(ラッキーでした!!!)。まあチョットは遠慮がちに撮影はしましたよ!!! そんな『かしも明治座探訪記(急きょ)』をここからはご覧ください。
先ずは入口の大看板。愛知県の方(まあ、それ以外にも有名ですが)には明治村の芝居小屋を彷彿とさせるのではないでしょうか?
そして小屋の全体です。明治から戦前までは全て升席となっており、そこに行くためや売り子さんが歩くための『あゆみ』と言われる板、そして手前が『仮花道』となっています。収容人数は1~2階を併せて600名!!!ということ。今は升席ではなくなっていますが、これは戦中に軍がこの明治座を倉庫として使ってしまった(という表現でしょうね~)ため、升席を邪魔だと取っ払ってしまったことが原因のようです。
舞台はこのようになっていました。真ん中は分かりにくいですが『廻り舞台』となっています。そして・・・・
小屋の方がわざわざ舞台に引いてくれました、これが明治に作られて以来、今も使われている娘引き幕。小屋の方曰く、吊り下げられていること、風通しが良いことなどから痛まずに使うことが出来ているのではとのことでした。またこの幕には当時、この小屋を作るためにボランティア(と言っていいのかな?)として働いた地元の女性達の名前が幕を彩っているんです。その中に、名古屋市中区にある女子大小路の由来であり、現在は大府市の中京女子大の創始者の名前もあるとのことで、女子レスリングのメダリストである吉田選手や伊調姉妹もここを訪れたそうでした(これが先ほどの割符です)。
ここからはいわゆる舞台裏へ。先ずは楽屋や大部屋(衣裳部屋)に通して頂きました。最初はメインの役者の楽屋を見せて頂いたんですが、壁には多くの有名無名の役者達の名前が落書きのように書かれており(笑)、ひとつのアート?のような感じでした。その中には・・・・
こけら落としとして最初に行われた公演の役者さんの名前が柱の一番上に飾られており、次に案内されたのは
十八代目 中村勘三郎さんが襲名披露公演を行われた際に落書きされたもの(笑)。そして小屋の方が『3月に坂本龍一さんがお越し下さって、森林組合と共同で始められることになったモア・トゥリーズの協定式も行われましてね。その時のものが・・・・』とこれを指差したんです!!!
(笑)これが今回の探訪記における一番のサプライズでした!!! まあ教授の生の字体を見たのは初めてですからビックリ(何とミーハーなことか・・・・笑!!!)。まさか明治座で教授のサインが見られるなんて思ってもみませんでした。ただ小屋の方(お爺さんです)に言わせると『坂本龍一と日付は分かるんだけど、下には何が書いてあるのか、さっぱり分からなんだよね~。色紙も書いてもらったんだけで、同じことが書いてあって・・・・笑』とのこと。一応、Ryuichi Sakamotoと書いてあると思いますよとは伝えたんですが、どうだったんでしょうか?
ちょっと光って見づらいんですが、昔は岐阜県内にも多くの芝居小屋があったそうなんです。それが今では明治座を含めて二軒だけが残っているとのこと。ただ全国にはまだまだ残っているそうで、そんな全国の芝居小屋との交流もあるとのことでした。
この後は下に降りて小道具部屋などで興味深いお話も伺いながら、最後はここを案内して下さったんです。
花道にある、舞台には欠かすこと出来ない、私が何度も落ちた・・・・『奈落(笑)』。この奈落の底でした。この写真は花道から奈落を見た一枚。そして奈落の底はこんな感じでありました。
今はコンクリートでしっかり固められ、敷き板も綺麗に貼られていました。写真はフラッシュ撮影ですが、そんなに薄暗く、不気味という訳でもなく、奈落の底というイメージとは若干?違っていました(笑)。
これは先ほど舞台でも案内した廻り舞台の下部(軸)です。この周りに円形にコロが付いており、今でも人力で回すそうなんです。そして奥へと向かいここが奈落から花道へ向かう階段となっていました。
こんな感じで小屋の方と明治座を隅から隅まで探訪させて頂きました。最後には受付にあった教授のサイン色紙も見せて頂いたんですが・・・・同じような筆記体で書かれていました(笑)。定期的に公演もありますので今度は公演も見に来て下さいねと声もかけて頂き、かしも明治座でのいい時間を終えました。帰ってから、かしも明治座の Websiteを見たんですが、明治座には似合わない?しっかりとしたSiteでしたので、みなさんも私の拙い説明よりもSiteを見てもう一度、楽しんで下さい(笑)!!!
そんな明治座を後に、最終目的地であります『加子母森林組合』へと向かいました。ここはモクモクセンターと呼ばれるヒノキを使った木工品や林業機械などの販売、体験コーナーを併設する施設内にあり、お土産物を探しながら店内をウロウロしてみると・・・・ここにも教授のサインや写真が展示してありました(笑)。そしてスタッフの方にモア・トゥリーズの森について尋ねてみたんです。すると・・・・教授が来たことやモア・トゥリーズの森に関しては知っていたんですが、ここでも森林組合のスタッフは平日しかいないので平日だったらその場所を案内できるんですが・・・・との返事。まあ仕方がないことだと諦め、お土産を買って帰ろうとすると別のスタッフが、
『チョット待って下さい』
と私を呼び止めたんです。『知っている者に電話してみますね』とわざわざ別のスタッフに電話を入れて場所を聞いてくれたんです。また、モア・トゥリーズの森は地元の人間でも迷うような林道にあるということで、手書きで地図まで書いて頂いたんです。これはホントに嬉しかったです!!! そして分からなかったらまた戻ってきて聞いて下さいねとも!!! そんな心温まる出会いのあったモクモクセンターを後に、モア・トゥリーズの森へと向かいました。驚くなかれ、迷わずに一発で行きましたからね(笑)。地図が素晴らしかったんじゃないの?みなさん、その通りです!!!
先ずはモクモクセンター前の国道を北上、すぐに先ほど伺った明治座の看板が見えてきますので、明治座の方へ向かいます。
そのまま明治座(右折)を通り過ぎ、道なりにドンドンと進んでいきます。すると
反射鏡が左手に見える交差点がありますので右折して、ドンドンと山へ登っていきます。
途中から舗装道路ではなく、砂利道(しかも砂利が大きいです)となり、轍もきつくなります。また車一台しか通ることのできない林道ですので、大型車(乗用車の)、車高の低いクルマは気をつけないと無理だと思いますので、ご注意ください。私は小型車でしたが、轍を避けて走ったり、大きな砂利(石)を避けたりして上がっていきましたが、超スロー、道幅ギリギリと慎重な運転を要しました。
スタッフの方に言われたのは『分岐があっても必ず左に行って下さい。わき道みたいなのは無視して林道に関しては必ず左に』ということでした。大きな分岐はここだけ。もちろん左に行きました。
見た目以上に急、轍のきつさ、砂利の大きさと人を(クルマを)寄せ付けないような森。ここがモア・トゥリーズの森か・・・・そんなことを考えながら走っていると・・・・
ついにこの看板を見つけることが出来ました。ホント、突然現れました(笑)!!! ここがモア・トゥリーズの森 加子母であります。林道脇にポツンとあった看板。ここでクルマを下り、モア・トゥリーズの森を感じてきました。
以前にNHKで特集された森のシンフォニーそのままに、鳥の声、風の音、木々のざわめき、私の足音(笑)しか聞こえません。それでも使い古された言葉『森林浴』というよりは、何か自然に戻った、自然の中に還った、そんな言葉が合うような場所でした。文明の音は何も聞こえません。森林保全、森林再生を目的とした『more Trees』は、実は人間再生の場所でもあるのでは?そんな実感を持ったひと時でした。
今回の『モア・トゥリーズの森』の旅を終え、森に出会い、様々な人たちに出会って感じたことを最後に少しだけ・・・・
例えばカーボンオフセットに代表される人間の排出したCO2を森が新たに還元、再生してくれる。この人間と森の関係(循環)以外にも、森とそこに住む人たちから発信される様々なものを元に、人的交流(循環)も『モア・トゥリーズの森』は目指しているのではないか?新たな森の循環、新たな人の循環、そんな姿(モデル)を作ろうと教授は考えたのではないか?そう思ったんです。特に今回はモア・トゥリーズの森との出会い以上に、かしも明治座での出会い、加子母森林組合での出会いが、『モア・トゥリーズの森』をキッカケに出会えたという気持ちとなり、よりそう思わせてくれたのかもしれません。『森』をキッカケに、中心に、『森』と共に生きる人たちと私達を様々な形で新たにつなげていく・・・・。そして『森』を通して『森』と共生してきた日本人の姿を再発見する・・・・そんなことを感じた今回の旅でした。
写真はモクモクセンターで買ったお土産、ヒノキのグラスです。当日は母の日ということで、ペアグラスになったかな(笑)?
今回もまた影響を受け、様々なことを感じさせ、様々なことを考えさせ、行動させる偉大な『他者』の存在に感謝する旅だったことを最後に付け加えておきます!!! もちろん、いい影響ばかりの偉大な『他者』ばかりではありませんが、それもまた嬉しいことだったりもします(笑)!!!
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